~粉引(こひき)のお話~
粉引(こひき)と読み、中国で白磁が盛んに作られていた頃、朝鮮でも、ああいう白い焼き物を作りたいと思ったが、朝鮮には、白くなる粘土がなかった、が、じゃ今ある赤土に白くなるように、その上に白い泥を塗って、化粧させれば、同じ様な物が出来るじゃないかと窯に入れて焼いてみたら表面粉を吹いたような白い焼き物ができたそうじゃ。
それが15~16世紀の頃じゃから随分と歴史のある焼き物じゃな。
粉吹が粉引になり、要は、白い焼き物への憧れ憧憬から生み出だされたものじゃのう、朝鮮では粉青沙器(ふんせいさき)と呼ばれそれが日本に入って来て、その簡素で清廉、歪んでいたり、染みていたり使い込まれ古びた、どこかうら寂しい感じから、ワビだサビだの茶道では人気の器になったそうじゃ。
なぜワビとかサビとか言われるかじゃが、普通の焼き物は素焼きした粘土の上に釉薬を掛けて焼く2重になっているのじゃが、この粉引は粘土の上に化粧その上に釉薬の3重構造になっているのじゃ、白い焼き物生み出す為のひと手間かかっているのじゃのう。
このひと手間が作った人の個性とか、人柄とか考え方が出るのじゃ,またもう一つは、化粧の濃度が薄ければ、下地の土が透けてグレーになるし見えるし、濃ければ下地の粘土は見えなくなって化粧の白さ際立つが、乾いてきた粘土の上に化粧泥の水分と化粧泥の重さも加わり、ろくろでせっかく作った物がパカッとくずれてしまうのじゃ、それでは器ができないので、ろくろで作ったら、素焼きしてから化粧をかければくずれないので安全策として、そういう方法で粉引の器を作っている人が多いと思うが、それは白化粧と言って粉引とは違うと私は思う、本来の粉引の一番美味しい柔らかな抱擁感、器を手に持っているのに、器に抱かれている感じが消えてしまうのじゃ、粉引の魅力はやはり3重構造にあると思うので、素焼きして化粧掛けしたものは2重構造と同じなので、表情が乏しく均一なものになるし、下地の粘土は素焼きしてあり、その上にかけられた化粧泥との収縮が変わってくるので、下の粘土への食いつきが弱くなり、特に飲み口、(口縁)がはがれやすくなる、もちろんそうにならないような対策法もありますが。
私にとって最高の器は、母の手のひら、掌なので、もちろん主役は中の料理であり主役を、器の持っている抱擁力が包み、口まで運ばせるのではないかと思う。
私の作っている粉引は、3重構造の素焼きをしない方法で作っているが、一見簡単そうに見えると思う、が、これが一番重要で一番難しい、8割乾燥で化粧をかけると学校で教えてもらったが、夏と秋冬では、乾燥する速度が全く違ってくるのでそれを把握するのが難儀であった,私は発泡スチロールの箱で保存し乾燥を遅らせると、いうことで対処し、化粧掛けたらすぐに前後左右から扇風機4個最強にして回し、一個一個に風をあてて、時間がたてば風の当たる箇所を少しずつずらして、崩れるのを防いだのじゃ。
またもうひとつとして粘土のチョイスも重要なのじゃ、当たり前じゃがな。
粉引の楽しみというか、粘土の上に化粧と釉が掛かっているところと、化粧が薄く粘土の色が透け見えているところ、化粧だけ、釉だけ、粘土だけみえるところと、化粧の隙間からちらっとスッピンが見えるのじゃ、荒れてたり滑らかだったり、またわざと意図的にスッピンを垣間見せ安心感を与えたり、1個の器の中から色んな事を想像させるのじゃ、
また化粧に使う原料、それらの配合割合も大事になってくるのう。
一見、普通で、シンプルで、簡単にみえる事がやってみると意外と難しい事が多いのう。
また粉引の欠点であり魅力でもある染みてくるという問題じゃがのう、粉引の器を骨董品として見ている人には大事な見所ではあると思うが、今のフローリングに椅子、スマホな生活形態にあっているのだろうかと思うが、どうだろうか、